熱田神宮について|歴史や概要を詳しく解説

熱田神宮について|歴史や概要を詳しく解説

はじめに

熱田神宮は、三種の神器の一つ「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」を祀る名古屋市熱田区の神社です。創祀は約1,900年前と伝わり、神宮自身が「伊勢の神宮につぐ格別に尊いお社」と記すように、古くから朝廷と武家の崇敬を受けてきました。

約19万平方メートルの境内は「熱田の杜」と呼ばれ、樹齢1,000年前後と推定されるクスノキが数本あります。この記事では、創祀から戦災復興までの歴史、信長塀や大楠などの見どころ、周辺スポットとアクセスを紹介します。

熱田神宮の正門(南門)、緑豊かな杜と鳥居の構図

熱田神宮の概要

正式名称熱田神宮
所在地愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1
主祭神熱田大神(天照大神=草薙神剣を御霊代として)
相殿神天照大神・素盞嗚尊・日本武尊・宮簀媛命・建稲種命
社格旧官幣大社・別表神社・勅祭社
創建景行天皇43年(伝・113年)
参拝時間境内自由(宝物館は9:00〜16:30、入館は16:00まで)(2026年9月時点)
拝観料境内無料(宝物館は大人500円、平常展・2026年9月時点)
定休日年中無休(宝物館は毎月最終木曜とその前日・12/25〜12/31休館)

※最新の参拝情報は熱田神宮公式サイトをご確認ください。

主祭神の熱田大神とは、草薙神剣を御霊代(みたましろ)とする天照大神のことです。熱田神宮は勅祭社(勅使が参向して祭礼を行う神社、全国16社)の一つで、最も重要な祭典である6月5日の例祭「熱田まつり」には勅使が参向します。

本宮・別宮1社と摂社・末社を合わせ、境内外に計45社が祀られています。

熱田神宮の歴史

1. 古代:草薙神剣の伝説——日本武尊と宮簀媛命

「古事記」「日本書紀」によれば、素盞嗚尊(すさのおのみこと)が出雲で八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した際、大蛇の尾から現れたのが「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」です。剣は天照大神に献上され、のちに皇位のしるしとして伝えられました。

景行天皇の時代、東征に向かう日本武尊(やまとたけるのみこと)はこの剣を伊勢で授かります。敵の火攻めに遭った際、剣で草を薙ぎ払って難を逃れたことから「草薙剣」の名がついたとされ、その地は駿河の焼津とも伝えられます。

東征の帰途、日本武尊は尾張国造の娘・宮簀媛命(みやすひめのみこと)を妃とし、剣を今の名古屋市緑区大高町の火上山に留め置いたまま伊吹山へ向かい、伊勢国の能褒野(のぼの)で亡くなりました。宮簀媛命が神剣を熱田の地に祀ったのが熱田神宮の始まりで、景行天皇43年(伝・113年)とされています。

2. 古代〜平安時代:国家的な崇敬——伊勢に次ぐ格式

熱田神宮は平安時代の「延喜式」で名神大社に列せられ、国家鎮護の社として特別に扱われてきました。和銅元年(708年)には元明天皇の勅命で新たに神剣が作られ、別宮・八剣宮が創祀されています。

「日本書紀」には、天智天皇7年(668年)に新羅の僧・道行が草薙剣を盗み出し、新羅へ向かったものの果たせなかったことが記されています。剣はしばらく宮中に置かれ、朱鳥元年(686年)に熱田へ戻されました。

3. 戦国時代:織田信長と桶狭間の戦い

永禄3年(1560年)、織田信長は桶狭間へ出陣する際に熱田神宮で必勝を祈願し、今川義元の大軍を破りました。そのお礼として奉納したのが、現在も境内に残る築地塀「信長塀(のぶながべい)」です。

武家の崇敬は別宮・八剣宮にも及び、天正3年(1575年)に信長が長篠出兵の際に社殿の修造を命じ、慶長4年(1599年)には徳川家康が拝殿・回廊・築地を修造、貞享3年(1686年)には将軍綱吉が本殿を造り替えた記録が残っています。

4. 江戸時代:東海道の宮宿と「宮の渡し」

江戸時代の熱田は、東海道五十三次の41番目の宿場「宮宿(みやじゅく)」として栄えました。「宮」は熱田神宮を指します。天保14年(1843年)には旅籠が248軒あったとされ、東海道でも有数の規模の宿場でした。桑名宿とは海路「七里の渡し」で結ばれていました。

5. 近代〜現代:戦災からの復興と現在

慶応4年(1868年)に神宮号を宣下されて熱田神社から熱田神宮となり、明治4年(1871年)に官幣大社に列せられました。社殿はそれまで尾張地方特有の尾張造でしたが、明治26年(1893年)に伊勢の神宮とほぼ同様の配置・規模の神明造に改められています。

昭和20年(1945年)3月・5月の空襲で本宮も被災し、境内の施設はほとんどが焼失しました。昭和30年(1955年)に本宮が造替され、創祀1900年(平成25年)を前に、平成21年(2009年)には大屋根の葺き替えなどの造営を終えています。令和3年(2021年)には刀剣を展示する「剣の宝庫 草薙館」が完成しました。

見どころ・おすすめスポット

1. 本宮(本殿)——三種の神器を祀る神明造の社殿

本宮の拝所は外玉垣御門の前で、この御門と四尋殿(よじんでん)を合わせて拝殿と呼びます。拝殿から奥を拝むと、外玉垣・内玉垣・瑞垣の三重の垣の先に、千木と鰹木を載せた本殿の屋根が見えます。本殿の中を一般の参拝者が見ることはできません。

内玉垣と外玉垣の間の広場は「中重(なかのえ)」と呼ばれ、例祭をはじめ多くの祭典がここで行われます。参拝の作法は一般的な神社と同じ「二拝二拍手一拝」です。

本宮の拝殿前、参拝者が祈りを捧げる荘厳な場面

2. 信長塀——桶狭間の勝利を今に伝える

信長塀は、桶狭間の戦勝のお礼として信長が奉納した築地塀です。土と石灰を油で練り固め、瓦を厚く積み重ねた造りで、神宮は西宮神社の大練塀、京都・三十三間堂の太閤塀とともに「日本三大土塀」の一つとしています。

3. 大楠——熱田の杜を象徴する巨木

手水舎の北側に立つ「大楠(おおくす)」は、弘法大師(空海)のお手植えと伝えられ、樹齢は1,000年を超えるといわれます。境内にはクスのほか、ケヤキ、カシ、シイ、ムク、イチョウなどが茂り、花が咲いても実のならない「ならずの梅」や、茶人が好む「太郎庵椿」も知られています。

4. 宝物館——国宝・重要文化財の刀剣コレクション

宝物館には皇室、将軍・藩主から一般の篤志家までが奉納した約6,000点が収蔵され、そのうち170点余りが国や愛知県の指定文化財です。国宝の「短刀 銘来国俊」のほか、古神宝、舞楽面、菊蒔絵手箱、熱田本日本書紀などがあり、展示は順次入れ替わります。入館料は大人500円(平常展、2026年9月時点)です。

令和3年(2021年)に開館した「剣の宝庫 草薙館」は刀剣専門の展示館で、奉納された名刀約450口を順次展示しています。なお、草薙神剣そのものは御神体として祀られており、公開されていません。

宝物館の外観、または展示されている刀剣のイメージ

5. 別宮八剣宮と清水社——本宮に準じる別宮と水の神の社

一の鳥居(南門)の西側に鎮座する別宮・八剣宮(はっけんぐう)は、本宮と同じ神を祀り、社殿の様式も年中の祭典も本宮に準じます。平成26年(2014年)には約80年ぶりに社殿が改修されました。

本殿の東、御田神社の北にある清水社(しみずしゃ)は、水の神・罔象女神(みずはのめのかみ)を祀る社です。社殿の奥に水が湧くことから「お清水さま」と呼ばれ、その水で眼を洗えば眼がよくなり、肌を洗えば肌がきれいになるという信仰があります。

清水社の湧き水と石、苔むした岩から清水が流れる風景

周辺の観光スポット

名古屋城——金のしゃちほこと天守閣

熱田神宮から名古屋市営地下鉄で約20分の名古屋城は、徳川家康が築いた城です。金の鯱を頂く天守で知られ、2018年に復元が完成した本丸御殿では障壁画の復元模写も見られます。信長ゆかりの熱田神宮と家康の名古屋城を続けて回ると、尾張の戦国史をたどれます。

あつた蓬莱軒——名古屋名物ひつまぶしの老舗

「あつた蓬莱軒(ほうらいけん)」は明治6年(1873年)に料亭として創業した鰻の老舗で、「ひつまぶし」は同店の登録商標です。熱田神宮近くに本店(地下鉄名城線「熱田神宮伝馬町駅」から徒歩7分)と神宮店(同駅から徒歩3分)があり、栄の松坂屋名古屋店にも店舗があります。混雑状況により受付を早めに終了することがあるため、時間に余裕を持って訪れましょう。

ひつまぶしの三つの食べ方、鰻の蒲焼きが美しく盛られた器

宮の渡し跡——東海道の歴史を感じる

熱田神宮から南に徒歩約10分の「宮の渡し公園」は、宮宿と桑名宿を結んだ「七里の渡し」の船着き場跡です。七里(約27キロメートル)の海路は東海道で唯一の海上区間でした。公園には常夜灯や時の鐘が復元されています。

アクセス方法

電車でのアクセス

  • 名古屋市営地下鉄名城線:熱田神宮伝馬町駅より徒歩約7分
  • 名古屋市営地下鉄名城線:熱田神宮西駅より徒歩約7分
  • 名鉄名古屋本線:神宮前駅より徒歩約3分(最もおすすめ)
  • JR東海道本線:熱田駅より徒歩約8分

バスでのアクセス

  • 名古屋市バス「神宮東門」下車すぐ
  • 名古屋駅からバスで約20分

車でのアクセス

  • 名古屋高速3号大高線 堀田出口より約5分
  • 東名阪自動車道 名古屋西JCTから名古屋高速経由(白川出口)
  • 熱田神宮東門駐車場(無料、約300台)、西門駐車場(無料、約40台)

おすすめのアクセス方法

名鉄神宮前駅から東門まで徒歩約3分です。名古屋駅からは名鉄名古屋本線で約6分なので、新幹線で名古屋に着いてからでも乗り換え1回で行けます。

まとめ

熱田神宮は草薙神剣を祀り、伊勢に次ぐ社として崇敬されてきた神社です。信長が奉納した信長塀、弘法大師お手植えと伝わる大楠、刀剣を展示する草薙館など、境内だけで歴史を追えます。門前のひつまぶしや名古屋城と組み合わせれば、名古屋の一日観光になります。

よくある質問

1

A.本宮の参拝だけなら30分〜1時間ほどが目安です。信長塀や大楠、宝物館・草薙館もあわせて見るなら1時間半〜2時間をみておくと安心です。

2

A.見ることはできません。草薙神剣は御神体として祀られており、公開されていません。奉納された刀剣は宝物館や剣の宝庫 草薙館で見られます。

3

A.境内は通年参拝できます。6月5日の例祭「熱田まつり」は境内で奉納行事が終日行われ、神宮公園では花火も上がります。初詣の時期は大変混雑します。

4

A.名古屋市営地下鉄名城線で熱田神宮伝馬町駅または熱田神宮西駅から名古屋城駅まで約20分、名古屋城駅から徒歩約5分です。

Photo: KKPCW(Kyu3) (CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons (Free License)