🕓 2025/7/14
#日本酒
朴葉味噌と杯を交わす旅:飛騨高山の町家・史跡・酒蔵をまるごと味わう!
目次
はじめに
雪をいただく北アルプスの麓、高山の古い町並みには、江戸情緒を映す町家と七つの酒蔵が肩を寄せ合うように佇んでいます。超軟水の伏流水と岐阜生まれの酒米〈ひだほまれ〉が織りなす“飛騨清酒”を味わいながら、朝市の賑わい・代官所〈高山陣屋〉の史跡・温泉街の湯けむりまでを一筆書きで巡る
――本記事では、徒歩と公共交通だけで楽しめる半日コースとフルコースを提案し、見学可否や試飲の最新情報も併せてご紹介します。飛騨の水・米・人が醸す豊かなテロワールを、路地に漂う麹の香りとともに体験してみませんか。
1. 古い町並と飛騨酒蔵で味わう日本酒とは
1 | 飛騨高山で味わう日本酒とは
飛騨の酒は、口に含むと米の旨みがふくらみ、喉元ですっと切れる──「ふくよかさ」と「キレ」を併せ持つのが身上です。その鍵は三つ。第一に北アルプスの雪どけが地下で長い年月ろ過された超軟水。高山市の主水源〈宮川〉の硬度は 16 mg/L と日本でもトップクラスの軟らかさで、発酵を穏やかに進め、絹のように滑らかな口当たりを生み出します。
第二に岐阜県育成の酒米 「ひだほまれ」。大粒・低タンパクで心白が大きく、精米60 %でも雑味を抑えた旨みを引き出せるため、飛騨の蔵は純米吟醸クラスでも気軽に楽しめる酒質を実現しています。
第三に県独自のG酵母/G2酵母。9号系の派生で、カプロン酸エチル生成量が従来比3倍──リンゴや洋ナシ、白ブドウを思わせる華やかな香りをもたらしつつ、後味を軽やかにまとめます。
こうして水・米・酵母の“三拍子”が整った飛騨清酒は、2025年全国新酒鑑評会で南飛騨の天領酒造が金賞を連覇するなど、近年受賞ラッシュが続いています。
2 | 古い町並&「七蔵」利き酒パスでめぐる半日モデル
朝、宮川朝市で味噌団子を頬張りつつ朱塗りの中橋を渡り、三町筋の古い町並へ。高山駅前の観光案内所で〈飛騨高山御酒飲帳〉(3,000円)を手に入れたら、午前10時の開蔵に合わせて最古の平瀬酒造店へ──「久寿玉」のやわらかな吟醸香で一日をスタートします。
その後は上三之町をそぞろ歩き、原田酒造場の爽快辛口「山車」、舩坂酒造店で朴葉味噌ランチと「深山菊」を味わい、午後は平田酒造場「飛鷺」、二木酒造「氷室」、川尻酒造場の熟成古酒を経て、老田酒造店「鬼ころし」で締めくくり。スタンプ帳が埋まったら高山陣屋前広場の抽選会へ。夕映えの屋台会館を覗き、匠バスで宿へ戻れば、木の香も酒の香も胸に残る半日旅の余韻が静かに広がります。
3 | “飛騨高山×南飛騨”協働──県酵母と金賞蔵の底力
高山の七蔵と下呂・奥飛騨エリアの蔵元は、岐阜県工業技術センターが開発した泡なしG酵母を共有し、「オール岐阜」原料で挑む共同プロジェクトを継続中。2025年の鑑評会では南飛騨天領酒造が純米大吟醸で金賞、北部の奥飛騨酒造も入賞を果たし、県産酵母+ひだほまれの可能性を証明しました。
さらに高山市では毎年6月、七蔵横断イベント〈酒蔵のん兵衛まつり〉を開催。蔵人自らが注ぐ“おらが酒”文化と町並保存運動が相乗し、「古都×地酒」のブランド力を高めています。
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | 岐阜県高山市 |
主な観光地 | 古い町並(三町筋)、高山陣屋、宮川朝市、中橋、飛騨民俗村〈飛騨の里〉、高山祭屋台会館 |
日本酒スポット | 平瀬酒造店〈久寿玉〉、原田酒造場〈山車〉、舩坂酒造店〈深山菊〉、平田酒造場〈飛鷺〉、二木酒造〈氷室〉、川尻酒造場〈ひだ正宗〉、老田酒造店〈鬼ころし〉、酒蔵のん兵衛まつり 会場 |
現在観光地×日本酒サイトを立ち上げ中です。これまでになかった、欲しかった情報が手に入るサイトです。どんどんこれから情報を追加していきますので、ぜひブックマークください。
2. 古い町並と飛騨酒蔵の「おすすめ酒蔵」
北アルプスの雪どけが地下で長い年月をかけてろ過され、硬度 16 mg/L 前後の超軟水〈宮川伏流水〉となって井戸に湧きます。そこへ岐阜県育成の酒米 ひだほまれ と、リンゴ様の香を生む G2酵母 を合わせることで、米の旨みとキレが共存する“飛騨清酒”が醸されます。
1. 有限会社平瀬酒造店|飛騨最古の「久寿玉」で味わう寒造り
出展:https://www.hida-nombe.jp/hirase/
概要元和 9 年(1623)創業、現蔵は大正 4 年再建。高山城下を見下ろす城山のふもとに十二棟の蔵が連なり、杉玉の下をくぐると梁や太鼓橋梁が残る伝統的構造が迎えます。ひだほまれを40 %まで磨いた純米大吟醸〈久寿玉〉は柑橘・白桃系の吟醸香と絹のような口当たりが持ち味。
全国新酒鑑評会では入賞常連で、創業400周年記念酒も発売。ガイドツアー(1 日6 回、要予約)では麹室から上槽までを見学し、20 種以上の酒を飲み比べられます。
項目 | 内容 |
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正式名称 | 有限会社 平瀬酒造店 |
創業年 | 1623 年 |
主な銘柄 | 久寿玉 |
見学 | ○ 要予約(1 日6 回) |
試飲 | ○ 5〜20 種無料 |
直売所 | 高山市上一之町 82 |
アクセス | JR高山駅 徒歩15 分 |
2. 有限会社原田酒造場|花酵母が彩る芳醇辛口「山車」
出展:https://www.sansya.co.jp/company.html
安政 2 年(1855)創業。重要伝統的建造物群保存地区・上三之町の町家蔵で「奥伝 飛騨流厳冬寒造り」を守ります。サクラやベゴニアから分離した花酵母を使う先駆的蔵で、看板銘柄〈山車〉はメロン様の吟醸香とキレのある旨辛バランスが特徴。蔵内には380 円できき酒し放題のバー、地酒プリンや大吟醸ソフトを出すカフェも併設。
仕込み期以外はタンクエリアの自由見学ができ、試飲で使ったお猪口は記念に持ち帰れます。
項目 | 内容 |
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正式名称 | 有限会社 原田酒造場 |
創業年 | 1855 年 |
主な銘柄 | 山車 |
見学 | ○ 仕込み期以外・自由 |
試飲 | ○ お猪口購入でフリー |
直売所 | 高山市上三之町 10 |
アクセス | JR高山駅 徒歩10 分 |
3. 有限会社舩坂酒造店|「日本酒テーマパーク」深山菊と体験型蔵
出展:https://www.funasaka-shuzo.co.jp/
元禄 16 年(1703)創業。古い町並の中心に醸造蔵・売店・日本酒バー・レストラン〈味の与平〉を集約した複合施設で、“見て・飲んで・食べて”楽しめる「日本酒テーマパーク」を標榜します。代表銘柄〈深山菊〉はG酵母由来の林檎香と後口の辛さが調和。
大吟醸「四ッ星」シリーズは令和元年度全国新酒鑑評会入賞。ガイドツアー(要予約)では麹室を間近に見学し、5 種テイスティング後に朴葉味噌×飛騨牛のペアリング料理を味わえます。
項目 | 内容 |
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正式名称 | 有限会社 舩坂酒造店 |
創業年 | 1703 年 |
主な銘柄 | 深山菊・四ッ星 |
見学 | ○ 予約制ガイド |
試飲 | ○ 無料/コインバー |
直売所 | 高山市上三之町 105 |
アクセス | JR高山駅 徒歩10 分 |
4. 二木酒造株式会社|飛騨唯一の吟醸専門蔵「氷室」「玉乃井」
元禄 8 年(1695)創業、16 代続く家業。「飛騨で唯一の吟醸蔵」を掲げ、仕込み水から温度管理まで吟醸造りに最適化。看板〈氷室〉はしぼりたて生酒のパイオニアで、フルーティーな吟醸香とシャープなキレが人気。
ひだほまれを50 %まで磨く〈大吟醸 H TAMANOI〉など四季限定品も豊富で、店頭では5〜8 種を有料試飲(150 円〜)。蔵内には季節の花餅や雛飾りが映える展示スペースがあり、町家文化と酒造りが同時に体感できます。
項目 | 内容 |
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正式名称 | 二木酒造株式会社 |
創業年 | 1695 年 |
主な銘柄 | 氷室・玉乃井 |
見学 | × 外観のみ |
試飲 | ○ 有料 150 円〜 |
直売所 | 高山市上二之町 40 |
アクセス | JR高山駅 徒歩15 分 |
3. 古い町並と飛騨酒蔵の「日本酒おすすめセレクション」
磯部・飛騨山脈の花崗岩層をくぐった伏流水は 硬度 16 mg/L 前後の超軟水。発酵を穏やかに進め、シルクのような舌ざわりを生みます。ここへ岐阜県オリジナル酒米 ひだほまれ(大粒・低タンパク)と青リンゴ様の吟醸香を生む G酵母/G2酵母 が加わり、高山市を中心に半径20 km 圏内に蔵が集積する“飛騨テロワール”を形づくっています。
1. 平瀬酒造店〈久寿玉〉「山廃純米」|高山市上一之町
元和9年(1623)創業の飛騨最古蔵が、⾼山・城山の井戸に湧く超軟水と県産〈ひだほまれ〉を60 %まで磨き、「櫂入れを極力せず自然の乳酸発酵に委ねる嘉儀式山廃」で仕込む看板酒。低温で40日以上かけて発酵させ、槽しぼり後に瓶火入れして旨味を残したまま熟成させるのが特徴です。
柑橘・マスカット系の含み香、ふくらみのある米旨を酸が締め、日本酒度+2・酸度1.8の骨格が朴葉味噌や漬物ステーキのコクをやさしく包みます。IWC2016純米部門BRONZEを受賞し、Kura Master 2023でも「手造り純米」カテゴリーで上位入賞。蔵ツアー(1日6回・要予約)ではこの山廃の仕込み槽を間近に見学できます。
項目 | 内容 |
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種別 | 山廃特別純米(精米歩合60 %) |
味わい | マスカット系の含み香/ふくらみとコク |
飲み方 | ぬる燗◎/常温○ |
相性料理 | 朴葉味噌、漬物ステーキ、飛騨牛すじ煮 |
どこで買える・飲める | 久寿玉蔵元直売所、上三之町酒店、市内郷土料理店 |
2. 原田酒造場〈山車〉「純米吟醸 花酵母造り」|高山市上三之町
安政2年(1855)創業、築200年超の町家蔵で**「奥伝 飛騨流 厳冬寒造り」**を守る蔵が手掛ける一本。アベリアの花から分離した花酵母×〈ひだほまれ〉55 %精米を用い、–5 °Cの低温発酵で青リンゴ・白桃を思わせるアロマと軽快なガス感を引き出しています。
米麹比率を40 %まで高めて旨・辛・酸を整え、後口はキリッと辛口。築蔵を自由に歩ける見学と、角打ち〈山車BAR〉での有料きき酒(常時10種)が人気で、2025年4月には搾りたて公開ツアーを伴う春の試飲会も開催されました。
項目 | 内容 |
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種別 | 純米吟醸(精米歩合55 %) |
味わい | 青リンゴ香/爽やか辛口 |
飲み方 | 冷酒◎ |
相性料理 | 焼き鳥、飛騨牛串、白身魚のカルパッチョ |
どこで買える・飲める | 原田酒造場売店、古い町並の角打ち〈山車BAR〉、特約酒販店 |
3. 舩坂酒造店〈深山菊〉「大吟醸 四ッ星」|高山市上三之町
元禄16年(1703)創業。播州〈山田錦〉を40 %まで磨き、低温長期もろみを-3 °Cで管理。上槽後は氷温熟成庫で90日寝かせ、瑞々しい洋ナシ・白ブドウ香を湛えつつ雑味を徹底的にそぎ落とします。全国新酒鑑評会金賞(2017)をはじめ国際コンクールでの受賞多数(ロンドンSAKEチャレンジ、ワイングラスでおいしい日本酒アワードほか)。
蔵と売店・レストランから成る「日本酒テーマパーク」では、英語ガイド付き蔵ツアーと大吟醸原酒のコインサーバー体験が2025年夏も継続中です。
項目 | 内容 |
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種別 | 大吟醸(精米歩合40 %) |
味わい | 穏やかフルーティ/上品な甘旨 |
飲み方 | 冷酒◎/花冷え○ |
相性料理 | ブリ刺し、たこわさ、からすみ |
どこで買える・飲める | 舩坂酒造売店、併設レストラン〈味の与平〉、市内旅館 |
4. 二木酒造〈氷室〉「吟醸 生酒」|高山市上二之町
元禄8年(1695)創業、飛騨唯一の吟醸専門蔵が1980年代に“生酒ブーム”の火付け役となった代表作。飛騨産酒米を60 %まで磨き、吟醸酵母を低温で発酵させた後、一切火入れせず氷温貯蔵。青リンゴやマスカットの香りに爽快な辛みとわずかな微発泡感が重なり、山菜天ぷらや豚しゃぶサラダと好相性。
直売所では季節限定の「氷室しぼりたて生原酒」も量り売りされ、公式サイトからクール便で全国発送(夏季は冷蔵試飲コーナー併設)。
項目 | 内容 |
---|---|
種別 | 吟醸 生酒(精米歩合60 %) |
味わい | フルーティ香/爽快辛口 |
飲み方 | 冷酒◎ |
相性料理 | 山菜天ぷら、豚しゃぶサラダ、チーズタルト |
どこで買える・飲める | 二木酒造直売所、飛騨地酒蔵オンライン、市内バル |
5. 天領酒造〈天領〉「純米吟醸 ひだほまれ」|下呂市萩原町
享保7年(1722)創業、南飛騨・萩原の花崗岩層から湧く超軟水と自社精米〈ひだほまれ〉50 %で仕込む看板酒。G酵母由来の青リンゴ系エステルと、ふくよかな米旨・シャープなキレのバランスが秀逸で、15 °C前後の冷酒がベスト。
2025年全国新酒鑑評会で純米大吟醸部門2年連続金賞を獲得し、蔵見学と利き酒は年中無休(要予約・英語対応可)。下呂温泉街の提携料理店では飛騨牛ステーキや小鮎フリットとのペアリングコースも提供されています。
項目 | 内容 |
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種別 | 純米吟醸(精米歩合50 %) |
味わい | 青リンゴ香/ふくよか旨辛 |
飲み方 | 冷酒◎/常温○ |
相性料理 | 飛騨牛ステーキ、小魚フリット、串カツ |
どこで買える・飲める | 天領酒造オンラインストア、下呂温泉街酒店、百貨店催事 |
4. 古い町並と飛騨酒蔵を巡る「モデルコース」
飛騨山脈の花崗岩層をくぐった伏流水は 硬度 16 mg/L 前後の超軟水。絹のような舌ざわりを生み、発酵を穏やかに進めます。ここへ岐阜県オリジナル酒米 ひだほまれと青リンゴ様の吟醸香を生む G酵母/G2酵母 が重なり、高山市を中心に半径 20 km 弱に七蔵がぎゅっと集積。“徒歩+バス+JR”だけで「町家・史跡・地酒」を一筆書きできるのが飛騨テロワール最大の魅力です。
①|朝市と古い町並蔵めぐり 町家&テイスティング半日コース
🕒 所要 約 4.5 h | 🧭 難易度 ★★☆(平坦路+石畳) | 🍶 試飲めやす 3 蔵
高山駅から徒歩圏の朝市・陣屋・古い町並をぐるっと巡り、平瀬・原田・舩坂の三蔵で計 10 種前後を利き酒。移動はすべて徒歩とワンコインの〈匠バス〉のみなので、運転不要で気軽に楽しめる“初めての飛騨清酒”入門コースです。蔵ツアーは最新情報を反映し、2025 年現在いずれも実施中(要予約または当日受付)。
②|高山陣屋と南飛騨蔵はしご 史跡&温泉フルコース
🕒 所要 約 7 h | 🧭 難易度 ★★☆(徒歩+JR+短距離タクシー) | 🍶 試飲めやす 3–4 蔵
史跡と郊外蔵を一気に制覇したい“酒好き上級者”向け。午前は陣屋と中心部 2 蔵で基礎を押さえ、JR で南飛騨へ足を延ばして 天領酒造(見学ツアー・どぶろく体験あり)を堪能。温泉足湯と郷土料理で休憩した後、高山へ戻り 老田酒造店 の辛口原酒で締める大充実プランです。公共交通+タクシーを組み合わせることで試飲量も確保しつつ、移動時間を短縮します。
さいごに
飛騨の酒は、北アルプスの清冽な伏流水と〈ひだほまれ〉が生むふくよかな旨み、そしてG酵母が添える青リンゴのような香りが三位一体となって醸されます。朝市の素朴な賑わい、高山陣屋に残る代官所の面影、石畳に連なる町家の格子戸
――そんな歴史の風景に身を置きながら、七蔵それぞれの個性を利き比べれば、酒ごとに異なる季節や職人の息遣いまでもが舌に宿ります。
公共交通と徒歩だけで巡れる気軽さも、運転を気にせず試飲を楽しめる大きな魅力。ぜひ最新の見学スケジュールを確認のうえで、朴葉味噌や飛騨牛と合わせ、雪どけ水が育むやわらかな酒質を五感で味わってください。杯を重ねるほどに、この地に流れるゆったりした時間が、旅の思い出をじんわりと深めてくれるはずです。