🕓 2025/4/17
#日本酒
松本城で心を潤し、地酒で舌鼓を打つ長野旅
目次
はじめに
松本といえば、まず思い浮かぶのが国宝・松本城。黒と白のコントラストが美しいこの名城は、日本最古の五重六階天守として知られ、北アルプスを背に堂々とした姿を今に残します。けれど松本の魅力は、実はそれだけじゃありません。
この記事では、松本城の歴史と見どころに加え、訪れる価値のある酒蔵、日本酒のおすすめセレクション、さらに観光と酒を両方満喫できるモデルコースまでをギュッと凝縮してご紹介。
歴史に触れて、美酒を味わい、五感で信州を楽しむ。そんな一日旅を始めてみませんか?
1. 松本城の歴史と見どころ
国宝の天守が語る、信州の誇りと城下町の美
長野県松本市にそびえる「松本城」は、戦国時代に築かれた歴史と、日本最古の五重六階の天守を今に伝える国宝の城。黒と白のコントラストが美しく、北アルプスを背景にしたその姿は、まさに“絵になる”日本の風景の象徴です。
城を中心に発展した城下町・松本には、伝統と革新が共存し、地元の誇る日本酒文化とも相性抜群。松本城を巡る旅は、歴史だけでなく、美酒との出会いも楽しめる贅沢なひとときを演出してくれます。
・信濃の守りと繁栄を象徴する、松本城の誕生
松本城の始まりは戦国時代。もともとこの地には「深志城」と呼ばれる砦が築かれており、それを発展させたのが豊臣秀吉の家臣・石川数正・康長父子。1582年ごろから本格的な城郭整備が始まり、1593〜1594年にかけて、現在のような五重六階の天守が完成しました。
天守は防御力と権威を兼ね備え、戦国時代の緊張感を色濃く残す構造が特徴。江戸時代には松本藩の政治・軍事の中心となり、数々の藩主たちによって受け継がれてきました。
・奇跡的に残った、現存する五重六階天守
松本城最大の特徴は、日本に現存する唯一の「五重六階」天守。外観は五重に見えるものの、内部構造は六階という独特なつくりで、当時の高度な建築技術を今に伝えます。
明治維新後の廃城令で取り壊しの危機もありましたが、地元有志の尽力により保存が決定。現在では国宝に指定され、全国から訪れる人々を魅了しています。急な階段や石落とし、狭間など、戦に備えたディテールを間近で体感できるのも見どころの一つです。
・月見櫓や太鼓門など、歴史が薫る構造美
松本城は天守だけでなく、周辺の櫓や門も見逃せません。優雅な意匠の「月見櫓」は、戦用というよりも文化的な役割を担った場所。一方で「太鼓門」や「黒門」は、敵の侵入を防ぐための堅牢な設計がなされており、機能美が光ります。
天守を囲むように残された石垣や堀も、往時の姿をそのままに残し、城好きならずとも足を止めたくなる趣があります。
・四季が彩る、城と自然が調和する風景
松本城は、四季折々の風景が楽しめるのも大きな魅力。春には桜が城の黒い壁を引き立て、夏は緑に囲まれた凛とした姿を見せます。秋には紅葉が水面に映え、冬は白く雪化粧された城が幻想的な雰囲気に。
特に「夜桜会」など季節限定イベントも開催され、昼と夜で異なる表情を見せる松本城は、いつ訪れても新しい発見があります。
【 松本城 概要情報 】
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | 長野県松本市丸の内4番1号 |
アクセス | JR松本駅から徒歩約20分/市街地周遊バス「タウンスニーカー」北コース「松本城・市役所前」下車すぐ |
入場時間 | 8:30~17:00(最終入場16:30)※季節やイベントにより変動あり |
定休日 | 年末年始(12月29日~1月3日) |
入場料 | 大人700円/小・中学生300円(天守内見学含む) |
見学所要時間 | 約45分〜60分程度(混雑時は待機あり) |
イベント情報 | 春の「夜桜会」、夏の「太鼓まつり」など季節ごとに開催 |
2. 松本城のおすすめ酒蔵
信州の自然と匠が育む、松本が誇る酒蔵を訪ねて
松本城を中心とする城下町・松本には、北アルプスの清らかな水と寒冷な気候、そして職人たちの情熱によって磨かれた、個性豊かな酒蔵が点在しています。
特に中信エリアにあたる松本は、華やかで香り高い酒質を持つ地酒が多く、食との相性も抜群。ここでは、松本市内やその周辺で訪れることのできる注目の酒蔵を厳選してご紹介します。各蔵の特徴や試飲・見学情報、アクセスも掲載しています。
1. 善哉酒造|名水「女鳥羽の泉」が育む、城下町の老舗蔵
出典:https://yoikanasyuzou.jimdosite.com/
江戸時代末期に創業した善哉酒造(よいかなしゅぞう)は、松本城からほど近いエリアに現存する、松本市内唯一の歴史ある蔵元。敷地内には名水「女鳥羽の泉」が湧き出ており、これを仕込み水として使用した日本酒は、やわらかく澄んだ味わいが特徴です。
代表銘柄「善哉」や「女鳥羽の泉」は、香りとキレのバランスが良く、地元の料理とも相性抜群。敷地内には直売所「穂髙酒店」が併設されており、酒蔵見学や試飲も可能。松本城観光とあわせて、気軽に立ち寄れる立地も魅力です。
項目 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 善哉酒造株式会社 |
創業年 | 江戸時代末期 |
主な銘柄 | 善哉、女鳥羽の泉 |
見学 | 要予約(敷地内見学可) |
試飲 | 可(穂髙酒店にて) |
直売所 | あり(穂髙酒店) |
アクセス | JR松本駅から市内バスまたは徒歩約15分、「薬祖神社」下車 徒歩約5分 |
2. 亀田屋酒造店|気軽に見学できる、観光フレンドリーな老舗蔵
出典:https://www.kametaya.co.jp/
明治時代創業の亀田屋酒造店は、「アルプス正宗」や「亀乃世」など、伝統と信州らしい爽やかさを併せ持つ地酒で知られる蔵元です。松本市内でもアクセスしやすい「下新駅」から徒歩約4分と観光にも便利な立地にあり、併設の「酒遊館」では試飲・購入が楽しめます。
見学は5月〜9月の非醸造期に限り予約制で実施されており、地酒に興味のある旅行者にもやさしい施設設計。酒粕スイーツや特産品など、松本らしいお土産探しにもぴったりのスポットです。
項目 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 株式会社亀田屋酒造店 |
創業年 | 明治時代 |
主な銘柄 | アルプス正宗、亀乃世 |
見学 | 可(要予約・5月〜9月のみ) |
試飲 | 可(酒遊館にて) |
直売所 | あり(酒遊館・9:00~17:00/水曜定休) |
アクセス | 松本電鉄「下新駅」から徒歩約4分 |
3. 大信州酒造|“洗練の信州酒”を生む、品質重視の名ブランド
出典:https://www.daishinsyu.com/
松本の酒といえば…と話題に挙がることも多い「大信州」。
その名に違わず、香りの美しさとキレの良さで、日本酒通の心を掴んで離さない存在です。明治時代創業という歴史を持ちながら、常に挑戦と革新を続けているのがこの蔵の真骨頂。
蔵見学は基本的に行っていませんが、敷地内にある専売所「原田屋」では、通年で商品の購入が可能。そして、特筆すべきはその奥にある予約制の「聞き酒ROOM」。
ここでは蔵人の案内を受けながら、季節限定酒や特別醸造酒を含む4種類の銘柄を少量ずつテイスティング。あわせて提供される酒肴とともに、約60分のゆるやかな酒の世界に浸ることができます。
項目 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 大信州酒造株式会社 |
創業年 | 明治時代 |
主な銘柄 | 大信州 |
見学 | 不可(公式情報なし) |
試飲 | 可能(※聞き酒ROOM・要予約) |
直売所 | あり(原田屋) |
アクセス | 松本電鉄「下新駅」から徒歩約8分(亀田屋酒造近く) |
3. 松本城の日本酒おすすめセレクション
北アルプスの雪解け水、冷涼で湿度の少ない気候、そして酒造りへの情熱が融合した松本の地酒。華やかで洗練された味わいは、全国の日本酒ファンからも高い評価を受けています。
ここでは、松本城周辺で手に入れやすく、旅の途中で味わうのにぴったりなおすすめ銘柄を厳選。味の特徴や相性の良い料理なども紹介しながら、日本酒と松本旅の相性の良さを体感してもらえるラインナップです。
1. 善哉(よいかな)|善哉酒造(松本市)
松本城にほど近い、現存する唯一の市内蔵「善哉酒造」が手がける代表銘柄。仕込み水には名水「女鳥羽の泉」を使用し、やわらかく、まろやかな口当たりが特徴。地元の人々から長く愛される“松本らしい酒”です。
特に「純米吟醸 善哉」は、香りは控えめながらも、じんわりと広がる米の旨みとキレが楽しめるバランス型。信州そばや山菜の天ぷらとの相性は抜群です。
項目 | 内容 |
---|---|
種別 | 純米吟醸/本醸造 |
味わい | やわらかく優しい旨み、後味はスッとキレる |
飲み方 | 冷やして、または常温 |
相性料理 | 信州そば、山菜の天ぷら、鶏の塩焼き |
どこで買える/飲める | 穂髙酒店(善哉酒造直売所)、松本市内飲食店 |
2. アルプス正宗|亀田屋酒造店(松本市)
明治創業の老舗が生んだ、爽やかで“信州らしさ”あふれる銘柄。北アルプスの清らかな水と、地元産米「ひとごこち」などを使用したこの酒は、すっきりとした飲み口と、やさしい香りが特徴です。
「純米吟醸 アルプス正宗」は、軽やかで飽きのこない味わいが好評。観光客向けの「酒遊館」では試飲も可能で、お土産にもおすすめの1本です。
項目 | 内容 |
---|---|
種別 | 純米吟醸/特別本醸造など |
味わい | すっきり軽快、柔らかい口当たり |
飲み方 | 冷やして/ぬる燗でも良し |
相性料理 | 馬刺し、信州おでん、塩焼き魚 |
どこで買える/飲める | 酒遊館(直売所)、松本市内酒店・飲食店 |
3. 大信州(だいしんしゅう)|大信州酒造(松本市)
“フルーティーでキレがある”を理想に掲げる松本の高評価蔵「大信州」。代表銘柄の「大信州 純米吟醸」は、リンゴや洋梨を思わせる芳醇な香りと、繊細でクリーンな味わいが際立ちます。
華やかでありながら、食事とのバランスも良く、ワイングラスで飲んでも映える上質な一本。特別な夕食や贈答にも選ばれています。
項目 | 内容 |
---|---|
種別 | 純米吟醸/純米大吟醸 |
味わい | フルーティーでキレがあり、透明感のある飲み口 |
飲み方 | 冷やしてワイングラスで |
相性料理 | チーズ料理、カルパッチョ、信州サーモンのマリネ |
どこで買える/飲める | 大信州専売所「原田屋」、松本市内の酒店・レストラン、聞き酒ROOM・要予約 |
4. 松本城と酒蔵巡りのモデルコース
松本城と酒蔵巡りのモデルコース
国宝の風格を持つ松本城と、北アルプスの清らかな水が育んだ信州の地酒。歴史と味覚が響き合うこの街で、“松本でしか味わえない”文化体験が待っています。
徒歩や電車を活用して、のんびりと松本の城下町と酒蔵を巡る旅へ出かけてみませんか?
①|松本城と定番酒蔵を巡る、はじめての松本満喫コース
🕒 所要時間:約6〜7時間|🧭 難易度:★☆☆|🍶 試飲数の目安:1〜2ヶ所
まずは王道から”を愉しむ大人の時間。松本城の風格を目の前に、悠久の歴史にひととき身を委ねたあとは、蔵造りの街並みが残る中町通りへ。古き良き城下町の空気を味わいながら、路地の喫茶店で一息つくのもまた一興です。
午後は、善哉酒造の直売所で名水仕込みの一杯を。華やかすぎず、だが芯のあるその味わいは、まさに“大人のたしなみ”。角打ちや甘味処に立ち寄りながら、静かに余韻に酔う——そんな時間が、この町にはよく似合います。
時間帯 | 行程 | 内容 |
---|---|---|
9:00〜11:00 | 松本城を見学 | 天守閣や黒門などを巡り、現存最古の五重六階天守の歴史に浸る。 |
11:00〜12:00 | 中町通りを散策 | 土蔵造りの街並みを歩きながら、カフェやギャラリーで一息。 |
12:00〜13:00 | ランチ | 地元食材を活かしたそばや山賊焼きの人気店で腹ごしらえ。 |
13:30〜14:30 | 善哉酒造(穂髙酒店)を訪問 | 女鳥羽の泉で仕込んだ銘酒「善哉」の試飲・購入が可能。 |
14:30〜15:30 | 酒販店や甘味処で締めくくり | 地元の角打ちや甘味で、旅の余韻をゆっくり楽しむ。 |
②|蔵元をはしご!信州地酒にどっぷり浸かる“酒好き”満足コース
🕒 所要時間:約7〜8時間|🧭 難易度:★★☆|🍶 試飲数の目安:2〜3ヶ所
地酒好きにはたまらない、“ちょっと贅沢なはしご酒の一日”。現存最古の天守に敬意を表しながら松本城を巡ったら、いざ蔵巡りの旅へ。
善哉酒造で名水の恵みに触れたあとは、ローカル線に揺られて「下新駅」方面へ。亀田屋酒造の酒遊館でじっくりと味を確かめ、締めくくりは、信州酒ファンの憧れ「大信州酒造」の専売所「原田屋」へ。
事前予約で入れる「聞き酒ROOM」では、選び抜かれた4種の銘柄と酒のあてを堪能する、極上の1時間が待っています。
時間帯 | 行程 | 内容 |
---|---|---|
9:00〜10:30 | 松本城周辺を散策 | 天守見学後、中町〜縄手通りの城下町を歩いて歴史を満喫。 |
10:30〜11:30 | 善哉酒造で試飲 | 試飲や蔵の雰囲気を体感しつつ、好みの1本を発見。 |
12:00〜13:00 | ランチ(松本駅周辺) | 信州サーモンや馬刺しなど、地酒と合う料理を味わう。 |
13:30〜14:30 | 亀田屋酒造店(下新駅徒歩圏) | 「アルプス正宗」の有料試飲や信州特産品の買い物も楽しめる。 |
15:00〜16:00 | 大信州専売所・原田屋を訪問 | ワイングラスで楽しむ“香りの酒”。聞き酒ROOM(要予約)で、上質なひとときを。 |
③|街中でゆったり、地酒を“つまみ飲み”するライトプラン
🕒 所要時間:約5〜6時間|🧭 難易度:★☆☆|🍶 試飲数の目安:1〜2ヶ所+飲食店
ちょっとだけ、でも確かに、“松本の美味”を味わいたい。そんな日にぴったりの、軽やかで品の良いお酒旅。
朝は澄んだ空気の中、松本城を静かに散策。その後は、手仕事の温もりが漂う中町通り・縄手通りをぶらりと。地酒をグラスで少しだけ楽しめるお店で、昼からの一杯を堂々と嗜むのも旅の特権。最後は甘味で締めくくれば、心も舌も満たされることでしょう。
時間帯 | 行程 | 内容 |
---|---|---|
9:30〜11:00 | 松本城の朝散策 | 空気が澄んだ朝の天守をじっくり堪能。 |
11:00〜12:00 | 中町・縄手通りでショッピング | クラフト雑貨や蔵カフェでひと休み。 |
12:00〜13:00 | ランチ+地酒ペアリング | 地酒メニューのあるお店で気軽にテイスティング。 |
13:00〜14:00 | 酒販店で試飲&お土産探し | 駅近の酒店や「穂髙酒店」で気軽な角打ち体験も。 |
14:00〜15:00 | 甘味処・カフェタイム | 名物の杏仁豆腐や和スイーツで締めくくり。 |
さいごに
松本城という国宝に触れ、城下町の風情を歩き、そして信州の自然と技が織りなす地酒に酔いしれる——そんな旅ができるのは、ここ松本ならでは。
日本最古の五重六階天守に思いを馳せながら、名水から生まれた一杯をゆっくり味わう時間は、きっと旅の記憶をより深く、豊かなものにしてくれるはずです。
歴史好きも、日本酒好きも、どちらも満足できる松本旅。次の休日、あなたも“城と酒の街”で、五感を満たすひとときを過ごしてみませんか?