
はじめに
鳥取県東部の日本海沿いに広がる鳥取砂丘は、日本を代表する海岸砂丘です。砂丘全体は東西約16km・南北約2.4kmにおよび、年間100万人以上が訪れます。
見どころは、標高約47mの砂丘列「馬の背」から見下ろす日本海、風が砂面に描く「風紋(ふうもん)」、砂像を展示する「砂の美術館」、ラクダとの記念撮影、パラグライダーやサンドボードなど。この記事では、砂丘の成り立ちと歴史、各スポットの料金と所要時間、季節ごとの見え方、アクセスをまとめます。
海辺の景勝地なら松島や宮島も有名ですが、鳥取砂丘で見られるのは、風で動き続ける砂の地形です。
鳥取砂丘の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県鳥取市福部町湯山 |
| 規模 | 南北約2.4km、東西約16km(観光エリアは南北約1km、東西約2.4km) |
| 馬の背 | 標高約47m(第二砂丘列) |
| 指定区分 | 山陰海岸国立公園(特別保護地区)、日本ジオパーク・世界ジオパーク |
| 入場料 | 無料(砂の美術館は有料) |
| 開放時間 | 24時間(砂丘自体) |
| 年間来場者数 | 100万人以上 |
| アクセス | JR鳥取駅からバスで約20分 |
観光客が歩くのは、砂丘全体の中心部にあたる東西約2.4km・南北約1kmの範囲です。広い砂の平地、急な斜面、草の生えた一帯が続きます。
砂は、中国山地から流れ下る千代川(せんだいがわ)が日本海へ運んだ花こう岩由来の粒子が、沿岸流と季節風によって海岸に積み上がったものです。珪砂(けいしゃ)が主成分のさらさらした砂で、風紋ができやすい一因になっています。
砂丘の周辺にはコウボウムギなど砂地に適応した植物も見られます。2010年には山陰海岸ジオパークが世界ジオパークに認定され、鳥取砂丘はその主要な見どころのひとつです。
鳥取砂丘の成り立ちと歴史
砂丘の形成——地質学的背景と氷河期からの誕生
最終氷期には海面が現在より100m以上低く、その後の海面上昇で約6,000年前に現在に近い海岸線ができました。千代川などの川が中国山地の花こう岩地帯から運んだ砂が、北西の季節風と沿岸流によって海岸に押し上げられ、内陸へと積み重なって、数万年をかけて現在の砂丘地形ができあがりました。
砂丘の断面には、時代ごとの風が積み上げた「風成層(ふうせいそう)」が何層も重なっています。砂層からは縄文・弥生時代の遺物も見つかっており、古くから人の暮らしと関わってきたことがわかります。
砂丘は今も動いています。特に冬の北西季節風は砂を大きく運び、馬の背の尾根が数メートル単位で移動することもあるため、訪れるたびに形が少しずつ違います。高さ40mを超える起伏を持ち、砂が活発に移動し続ける「稼働砂丘」であることが、国立公園の特別保護地区や世界ジオパークとしての評価につながっています。
江戸時代〜近代の砂丘と人々の生活
江戸時代の砂丘は観光地ではなく、季節風で運ばれた砂が農地や集落を埋める「砂害(さがい)」の元でした。
鳥取藩はクロマツを中心とした砂防林の植林を繰り返しましたが、植えた木が砂に埋まることも多く、砂との戦いは長く続きました。
一方で、砂丘の南側の湿地では農業やいぐさの栽培が行われ、漁村では砂丘が強風をさえぎる役割も果たしていました。
大正時代からは県の事業として砂防林の整備が進められ、第二次世界大戦後の1948年(昭和23年)からは砂丘地内でも本格的な植林が始まりました。砂の移動はある程度抑えられましたが、これが後の「緑化問題」につながります。
大正時代になると、砂丘は文人や旅行者が訪れる景勝地として知られるようになりました。
国立公園指定と観光地化
1963年(昭和38年)に山陰海岸国立公園が指定され、鳥取砂丘はその特別保護地区に含まれました。保護と観光の両面で大きな転機です。
道路や観光施設、宿泊施設の整備が進み、マイカーや観光バスが普及した1960〜70年代には来場者が大きく増えました。
1970年代以降は修学旅行の定番コースにもなりました。
1990年代には国内観光の低迷で来場者が減りましたが、2000年代の「砂の美術館」開設などで客足が戻り、近年は訪日客も増えています。
砂丘の保全活動と緑化との戦い
砂丘が抱える大きな課題が「緑化」です。砂害を防ぐために植えた林や周辺の植物が、今度は砂丘そのものに入り込み、砂の景観を狭めるようになりました。
1970年代頃から、コウボウムギなどの植物が砂丘斜面に広がり、裸の砂地が年々縮小しました。原因として、防砂林からの種の飛来、大気汚染物質による富栄養化、来場者増加に伴う環境変化などが挙げられています。
1990年代には砂丘中心部にまで植物が入り込み、県や市が除草を中心とする保全活動を始めました。現在は地域住民やボランティア、行政が参加する除草作業が定期的に行われ、裸砂面の縮小は一定程度抑えられていますが、継続的な対策が必要です。
砂地がなくなると、砂丘特有の植物や昆虫も生きられなくなります。除草は景観だけでなく生態系を守るための作業でもあります。
現代の鳥取砂丘
2010年の世界ジオパーク認定後は、砂丘の地質を伝えるジオツーリズムの整備も進みました。
訪日客の増加に合わせて、案内サインの多言語化や外国語ガイドの育成も進められています。
一方で、緑化に加え、混雑、立入禁止区域への侵入、ゴミの散乱といった問題もあります。
見どころ・おすすめスポット
馬の背——高さ47mの砂丘の頂
「馬の背(うまのせ)」は砂丘を代表する砂の尾根(第二砂丘列)で、海抜約47m。砂丘の入口から見ると、砂の壁のような斜面が正面にそびえます。
斜面は場所によって30〜35度に達し、一歩ごとに足が沈みます。乾いた砂は崩れやすく、夏の午後は特に登りにくくなります。朝や雨上がりは砂が締まっていて、比較的歩きやすいことが多いです。
頂上からは日本海が一望でき、振り返ると砂丘の起伏の先に防砂林と鳥取の街並みが見えます。夕方は日本海に沈む夕日が見られます。
登るのが体力的に不安な場合は、砂丘全体を見渡せる「砂丘展望台」から眺める方法もあります。
- 登坂所要時間:砂丘入口から頂上まで約15〜25分(体力・砂の状態による)
- おすすめ時間帯:日の出直後(足跡が少なく風紋が残りやすい)・夕暮れ時(日本海の夕日)
- 注意点:サンダル・ヒールは不可。スニーカー以上の靴を推奨。砂が靴に入るため、砂除けのゲイター持参も有効
- 冬季:降雪時は雪と砂が混じった景色になる(防寒必須)
砂の美術館
「砂で世界旅行」をコンセプトに、砂像(砂の彫刻)を専門に展示する美術館です。砂丘から徒歩約5分、最寄りバス停は「砂の美術館前」。開館時間は9:00〜18:00(最終入場17:30、2026年9月時点)で、テーマを変えながら新しい作品が作られます。
2006年に野外展示として始まり、大型テントでの展示を経て、2012年から屋内施設での展示になりました。美術館によれば、砂像専門の屋内展示施設としては世界初です。過去には「イギリス」「東南アジア」「ロシア」「ドイツ」「アメリカ」「エジプト」「フランス」などがテーマになりました。
作品は海外から招かれた砂像彫刻家が、鳥取砂丘の砂を素材に制作します。大きなものは高さ数メートルにもなり、人物の表情や建物の細部まで彫り込まれています。会期が終わると作品はすべて崩され、その砂が次の作品に使われます。
作品保護のため、展示室内は外気温に近い状態に保たれています(夏は外よりやや涼しい程度で、冬は防寒が必要)。展示は例年4月下旬頃から翌年1月上旬までで、その後は次の展示の制作のため休館となります(2026年の会期は4月24日〜2027年1月3日)。
入館料は一般800円・小中高生400円(2026年9月時点)です。
ラクダとの記念撮影
砂丘の入口付近の「らくだや」では、フタコブラクダと記念撮影ができます。ラクダは1960年(昭和35年)創業のらくだやの初代社長が砂丘に連れてきたもので、砂丘観光の名物として続いています。
料金はラクダにまたがっての撮影が1人650円、横に並んでの撮影が1人100円です(2026年10月時点、らくだや)。2026年は当面、記念撮影のみの営業で、ラクダ乗り体験は休止中です。
天候不順や気温が極端に低い日は休業となることがあるため、事前確認がおすすめです。
パラグライダー・サンドボード体験
風と急斜面に恵まれた鳥取砂丘はパラグライダーの練習地として知られ、周辺にはパラグライダースクールが複数あります。
初心者向けの半日体験コースは経験不問で参加でき、インストラクターの指示を受けながら一人で数十メートルの高さから飛びます。料金は8,000円〜(別途安全管理料500円、2026年10月時点、ゼロパラグライダースクール)です。
手軽なのはサンドボード(砂ソリ)です。ボードに乗って砂の斜面を滑り降りるアクティビティで、馬の背の斜面はスピードが出ます。サンドボードスクールなどが行う体験に参加して滑ることができます。
ほかに、ガイドと歩きながら砂丘の地質・生態・歴史を学ぶジオガイドツアーやサンセットツアー、夜の星空観察を組み込んだツアーもあります。
アクティビティの多くは事前予約制で、7〜8月やGWは早めの予約を。風や天候で中止になることもあるため、前日に最新情報を確認してください。
鳥取砂丘ジオパーク
砂丘の地質を知るなら、2018年に旧・鳥取砂丘ジオパークセンターを改装して開館した「山陰海岸国立公園 鳥取砂丘ビジターセンター」に立ち寄るとよいでしょう。
砂丘の形成過程、砂が動くしくみ、砂丘の生き物などを映像・模型・パネルで解説しています。散策の前に見ておくと、風紋や斜面の見え方が変わります。入館は無料。
山陰海岸ジオパークは砂丘だけでなく、浦富海岸の断崖、岩美町の洞窟群、兵庫県の玄武洞なども含む広域のジオパークです。車やバスで周辺のジオサイトを合わせて回ることもできます。
ジオガイドが同行するツアーでは、風紋・砂紋ができるしくみや砂粒の観察など、ひとりで歩くだけでは気づきにくい点を解説してもらえます。外国語対応のガイドもいます。
山陰海岸の海岸植生・砂防林・湿地もあわせて観察できるため、学校の理科見学や自然観察会にも使われています。
季節別の楽しみ方
春・夏——日の出と夕日が砂丘を染める
春(3〜4月)は気候が穏やかで、夏に比べて人が少なく、ゆっくり歩けます。風の強い日のあとには砂面に風紋が現れますが、人が歩くとすぐ消えるため、足跡の少ない早朝が見やすい時間帯です。
夏(7〜8月)は最も混む時期です。真夏の昼間は砂面が60度を超えることもあるため、早朝か夕方の訪問がおすすめです。日の出前後や日没前後には、砂丘が朝日や夕日の色に染まります。
秋——風紋の季節と黄金色の砂丘
秋(9〜11月)は気温が下がり、日本海側からの北西風が強まって砂がよく動くため、風紋が見られる機会が増えます。
日差しの角度が低くなると砂の起伏の陰影がはっきりし、空気が澄んだ日は馬の背から水平線まで見渡せます。
時期によっては砂丘の除草ボランティアに参加することもできます。
冬——雪と砂が織りなす幻想世界
冬(12〜2月)は訪問者が少ない時期です。雪が積もると、白い雪と黄褐色の砂が入り混じった景色になります。
風が強く気温も低いため、防寒・防風対策は必須です。砂が舞い上がることもあるので、サングラスなど目を守るものがあると安心です。
人の少ない冬の早朝には、積もった雪の上に風紋が刻まれていることもあります。
アクセス方法
電車でのアクセス
最寄り駅はJR鳥取駅で、駅からはバスで砂丘へ向かいます。
主要都市からのアクセス
- 大阪方面から:JR大阪駅からスーパーはくと(特急)でJR鳥取駅まで約2時間30分。または新幹線で姫路駅まで行き、特急スーパーはくとに乗り換える方法もあります。
- 岡山・倉敷方面から:JR岡山駅からスーパーいなば(特急)でJR鳥取駅まで約1時間50分。
- 鳥取市内から砂丘へ:JR鳥取駅北口の鳥取バスターミナルから路線バス「鳥取砂丘線」で約22分、「砂丘会館(鳥取砂丘)」バス停下車(片道380円、2026年9月時点)。
バスでのアクセス
路線バス「鳥取砂丘線」(日ノ丸自動車・日本交通)は鳥取駅から約22分です。土日祝日には観光周遊バス「ループ麒麟獅子」も運行しており、1日乗車券(大人700円、2026年9月時点)で砂丘と鳥取市内の観光地を回れます。
大阪・神戸方面からは鳥取駅行きの高速バスもあり、鳥取駅で砂丘方面の路線バスに乗り継げます。
車でのアクセス
関西・山陽方面からは中国自動車道または山陽自動車道を経由し、鳥取自動車道(鳥取道)の鳥取IC、または山陰自動車道の鳥取西ICで降り、砂丘方面へ。鳥取ICから砂丘まで車で約20分です。
砂丘周辺には無料・有料の駐車場があり、夏休みやGWは混雑します。有料の鳥取砂丘駐車場は乗用車500円(24時間ごと、2026年10月時点)です。
まとめ
まずは馬の背に登って日本海を眺め、砂の美術館と組み合わせるのが基本の回り方です。夏は早朝か夕方、風紋を見たいなら秋の早朝がねらい目です。
ほかの自然景観なら那智の滝、宿選びには日本の旅館の記事も参考にしてください。



